LoTW(Logbook of the World)のしくみガイド

― 仕組みの基礎から、初期登録・証明書の取得、そして更新手続きまで ―

LoTW を初めて使う方から、証明書の更新でつまずいた方まで、ひととおりの流れを通しで解説します。今回のように「不完全な証明書 ― TQ6 の一致が必要」と表示されて戸惑ったときの読み解き方も含めています。


目次

  1. LoTW とは何か
  2. 仕組み ― 電子署名の考え方
  3. 4つの構成要素と用語
  4. ファイルの種類(.tq5 / .tq6 ほか)
  5. 全体の流れ
  6. 初期登録 ― 証明書の取得
  7. 証明書(TQ6)の読み込み
  8. 局の所在地の登録
  9. QSO ログのアップロード
  10. 証明書の更新手続き
  11. バックアップと引っ越し
  12. よくある質問(トラブル対処)

1. LoTW とは何か

LoTW(Logbook of the World/ログブック・オブ・ザ・ワールド)は、米国アマチュア無線連盟 ARRL が運営する、交信(QSO)記録を電子的に照合するための世界共通の仕組みです。自分の交信記録を LoTW にアップロードすると、相手局のアップロードした記録と自動で突き合わせが行われ、両者が一致した交信は「確認済み(Confirmed)」として記録されます。

この確認済みデータは、DXCC・WAS・VUCC・WPX・WAZ といった各種アワードの申請にそのまま使えます。従来のように紙の QSL カードを郵送で集めなくても、オンラインで交信の証明が完結するのが最大のメリットです。

ひとことで言うと
「紙の QSL カードのやり取りを、改ざんできない電子署名つきのデータ交換に置き換えたもの」です。世界中の局が同じ台帳(Logbook)に記録を持ち寄り、機械が照合します。

2. 仕組み ― 電子署名の考え方

LoTW は、なりすましや改ざんを防ぐために公開鍵暗号(public-key cryptography)という技術を使っています。難しく聞こえますが、考え方はシンプルです。

  • 秘密鍵(Private Key)… あなたのパソコンの中だけに保存される「実印」のようなもの。外に出しません。(電子的には単体ファイルにはならず、バックアップ.tbk.p12に含めて保存します)
  • 公開鍵(Public Key)+証明書(Callsign Certificate)… ARRL があなたのコールサインと結び付けて発行する「印鑑証明書」のようなもの。(公開鍵は申請ファイル.tq5で送られ、証明書は.tq6として発行されます)

交信データをアップロードするとき、TQSL ソフトがあなたの秘密鍵で電子署名を付けます。LoTW 側は、ARRL が発行した証明書を使ってその署名を検証します。これにより「このデータは確かにあなたのコールサインの持ち主が作ったもので、途中で書き換えられていない」ことが保証されます。

重要な性質
秘密鍵はあなたのパソコンにしか存在しません。だからこそ、証明書(TQ6)は「その秘密鍵を作ったのと同じパソコン」でしか有効化できません。この点が、後述の「証明書の読み込み」や「不完全な証明書」の理解に直結します。

3. 4つの構成要素と用語

LoTW を使うには、次の4つがそろっている必要があります。

要素役割
TQSL(Trusted QSL)証明書の取得・更新や、ログへの署名・アップロードを行う無料ソフト。パソコンにインストールして使います。
コールサイン証明書(Callsign Certificate)「この QSO の送信元は自分だ」と証明するデジタル証明書。ARRL が発行します。有効期限は3年。電子的には ARRL 発行の.tq6ファイルを指します。
局の所在地(Station Location)運用地の情報(グリッドロケーター、都道府県、市郡など)。アワード集計に使われます。TQSL 内で設定します。
LoTW アカウントLoTW ウェブサイトにログインし、確認状況の閲覧やアワード申請を行うためのユーザー名・パスワード。
証明書と所在地の違い
証明書=「誰が」(コールサインの本人確認)、所在地=「どこから」(運用場所)を表します。1つの証明書で、複数の所在地を使い分けられます。
各要素は電子的に何にあたるか
  • コールサイン証明書(Callsign Certificate)… ARRL が発行する.tq6ファイル。TQSL に読み込むと PC 内の秘密鍵とペアになり「有効な証明書」になります。
  • 秘密鍵(Private Key)… PC 内の TQSL に保存され、単体のファイルにはなりません。バックアップ.tbk.p12に秘密鍵ごと含めて保存します。
  • 公開鍵(Public Key)… 申請ファイル.tq5に入れて ARRL へ送ります。
  • 局の所在地(Station Location)… TQSL 内に保存される設定で、バックアップにも含まれます。
ファイルそのものの詳細は「4. ファイルの種類」を参照してください。

4. ファイルの種類(.tq5 / .tq6 ほか)

LoTW では拡張子の異なるいくつかのファイルを扱います。これを押さえておくと、手続き中の画面表示が一気に理解しやすくなります。

拡張子名称内容・向き
.tq5証明書リクエストあなた → ARRL。証明書(または更新)を申請するファイル。公開鍵が入っています。
.tq6発行された証明書ARRL → あなた。ARRL が署名して発行する証明書本体。これを読み込むと有効になります。
.tq8署名済みログあなた → LoTW。交信記録に電子署名を付けたアップロード用ファイル。
.tbk / .p12バックアップ証明書と秘密鍵をセットで保存する控え。引っ越しや復旧に使います。
.adiADIF ログロギングソフトが出力する交信記録。TQSL に読み込ませて署名します。
ポイント:tq5 と tq6 はペア
.tq5(申請)を出すと、ARRL が処理して .tq6(証明書)を返してきます。秘密鍵(PC 内)+ tq6 の両方がそろって初めて証明書は「有効」になります。片方だけの状態が「不完全な証明書」(TQ6 の一致が必要)です。

5. 全体の流れ

初めて LoTW を使い始めるときの大きな流れは次のとおりです。まず全体像をつかんでから、各ステップの詳細に進みましょう。

① TQSLをインストール
   ↓
② 証明書をリクエスト(.tq5)
   ↓
③ 本人確認
   ↓
④ 証明書を読み込み(.tq6)
   ↓
⑤ 局の所在地を登録
   ↓
⑥ ログをアップロード

6. 初期登録 ― 証明書の取得

ステップ1:TQSL のインストール

ARRL のサイトから無料の TQSL(Trusted QSL) をダウンロードし、インストールします。ウィザードに従い[Next]を押していくだけで完了します。以後の作業はすべてこのソフトから行います。

ステップ2:証明書をリクエストする

TQSL を起動し、証明書がない状態だと申請を促すダイアログが出ます(メニューの[コールサイン証明書]→[コールサイン証明書をリクエスト]からでも可)。ウィザードで次を入力します。

  1. コールサインとエンティティ … 自分のプライマリコールサイン(/P などの付加は付けない)、DXCC エンティティ(日本なら JAPAN(339))、そのコールでの最初の QSO 開始日を入力。終了日は空欄のままにします。
  2. 氏名・住所 … 氏名と住所を入力。※米国コールの場合は FCC データベースの登録住所と一致させる必要があります。日本の局は運用地の情報を入れるとグリッド等の候補が正しく表示されます。
  3. メールアドレスとパスワード … 連絡用メールアドレスを入力。証明書にパスワードを設定するかどうかを選べます(共有 PC なら設定推奨、個人 PC なら空欄でも可)。

この時点で、あなたのパソコンに秘密鍵が生成・保存され、公開鍵を含む.tq5ファイルが ARRL へ送られます(オンラインなら自動送信、オフラインなら.tq5を保存して LoTW サイトからアップロード)。

ステップ3:本人確認(ID Verification)

ARRL は、なりすまし防止のため申請者の本人確認を行います。方法は所在地によって異なります。

対象本人確認の方法
米国の局登録住所宛に ARRL からポストカード(はがき)が郵送されます。記載の8文字の検証コードを LoTW の検証ページで入力します。
日本など米国外の局無線局免許状のコピーなど運用が認められていることの証明と、氏名が確認できる公的書類(身分証など)1点のコピーを ARRL へ提出します(メール送付、DXCC カードチェッカー経由、または郵送)。

審査が通ると、ARRL からLoTW アカウントのユーザー名・パスワードと、コールサイン証明書(.tq6がメールで届きます(米国のポストカード方式では通常3営業日以内)。

日本の局の実務メモ
多くの日本の局は、免許状のコピーと本人確認書類をスキャンして lotw-help@arrl.org 宛にメールで送る方法を利用しています。提出方法や最新の宛先は ARRL の公式ヘルプで必ず確認してください。

7. 証明書(TQ6)の読み込み

ARRL から届いた.tq6ファイルを、TQSL に読み込ませて証明書を有効化します。これで秘密鍵とペアになり、「有効な証明書」になります。

  1. TQ6 ファイルを入手する … メールに添付されたコールサイン.tq6を保存します。添付を保存できない場合は、LoTW サイトにログイン →[Your Certificates]からcerts.tq6をダウンロードできます。
  2. 同じパソコンで読み込む必ず、リクエストを作成したのと同じパソコンで読み込みます(秘密鍵がその PC にしかないため)。
  3. TQSL で読み込む … TQSL の[コールサイン証明書]タブ →[コールサイン証明書を読込み](緑の↓アイコン)から.tq6を選択。ファイルをダブルクリックしても読み込めます。
  4. 確認ダイアログを進める … 信頼されたルート証明書を受け入れる旨の確認が出たら承諾します。
  5. 完了を確認 … 証明書に「有効」を示す金メダルのアイコンが付けば成功です。読み込み後はすぐにバックアップを作成しておきましょう(第11章)。
「不完全な証明書 ― TQ6 の一致が必要」と出るとき
これはエラーではありません。秘密鍵は PC にあるが、相方の.tq6がまだ読み込まれていない状態です。原因は次のいずれかです。
  • ARRL 側でまだ.tq6の発行処理中(ステータスに「awaiting further processing」と表示)
  • .tq6は届いたが、まだ読み込んでいない
.tq6を受け取り、上の手順で読み込めば「有効な証明書」に移り解消します。

8. 局の所在地の登録

証明書が有効になったら、次に局の所在地(Station Location)を登録します。TQSL の[局の所在地]タブから[局の所在地を追加]を選び、どのコールサイン証明書を使うか、DXCC エンティティ、グリッドロケーター、都道府県・市郡(日本の場合は JCC/JCG など)を入力します。

アワード集計はここで登録した所在地情報にもとづいて行われます。移動運用など運用地が複数ある場合は、所在地を複数登録して使い分けます。1つの証明書に対して、所在地はいくつでも作れます。


9. QSO ログのアップロード

準備が整ったら、交信記録をアップロードします。基本の流れは次のとおりです。

  1. ログを用意 … ロギングソフトから ADIF 形式(.adiなどで交信記録を書き出します。
  2. 署名する … TQSL の[ログの操作]から[ログファイルに署名してアップロード]を選び、使用する証明書と所在地を指定してログを署名します(.tq8が作られます)。
  3. アップロード … そのまま LoTW へ送信されます。相手局も同じ QSO をアップロードしていれば、自動照合されて「Confirmed」になります。
  4. 確認する … LoTW サイトにログインし、確認済み件数やアワードの進捗を確認できます。
照合のコツ
確認が成立するには、双方のコールサイン・日時・バンド・モードが一致している必要があります。日時のズレ(UTC の取り違えなど)は不一致の代表的な原因です。

10. 証明書の更新手続き

コールサイン証明書の有効期限は3年です。期限が切れる前に更新(Renewal)すれば、同じ秘密鍵を引き継いで簡単に新しい証明書に切り替えられます。

最重要の注意
更新をリクエストした瞬間に、いま使っている証明書は無効化されます。準備が整ってから実行してください。また、期限が切れてしまった証明書は「更新」できません。その場合は新規(Replacement)として取り直しになります。必ず期限内に更新しましょう。

更新の手順

  1. 証明書を選ぶ … TQSL の[コールサイン証明書]タブで、更新したい証明書を選択し、[更新(Renew)]ボタンを押します。
  2. 内容を確認 … リクエスト画面で、QSO 開始日(既存の値が入っています)を確認。アクティブなコールなら終了日は空欄のまま。氏名・住所・メールを確認・修正します。
  3. パスワードとアップロード … 必要ならパスワードを設定し、リクエストをオンラインでアップロード、またはオフラインなら.tq5として保存して LoTW サイトからアップロードします。
  4. ARRL の処理を待つ … ARRL が内容を審査し、新しい証明書(.tq6)をメールで送ります。通常1営業日以内に完了します。
  5. 新しい証明書を読み込む … 届いた.tq6をダブルクリック(または[読込み])します。古い証明書は自動的に置き換えられ、金メダルのアイコンで有効になります。
  6. バックアップ … 更新後の証明書のバックアップを取り直しておきます。
今回の画面(更新中)の読み方
ステータスに「Your renewal certificate request is accepted and awaiting further processing」と出ている場合、更新リクエストは受理され、ARRL が.tq6を作成中という意味です。左のツリーで「不完全な証明書 ― TQ6 の一致が必要」に入っているのはこのためで、正常な途中経過です。.tq6が届いて読み込めば「有効な証明書」に移ります。なお、この間も期限前の元の有効な証明書は引き続き使えます

11. バックアップと引っ越し

秘密鍵はあなたのパソコンにしか存在しないため、PC の故障・買い替え・OS 再インストールで失うと、その証明書は二度と使えなくなります。定期的にバックアップを取りましょう。

  • バックアップの作成 … TQSL の[ファイル]メニューから、証明書と秘密鍵をまとめた.tbk(または.p12)ファイルとして保存します。設定したパスワードは必ず控えておきます。
  • 新しいパソコンへの引っ越し … 新 PC に TQSL をインストールし、[ファイル]から .tbk / .p12を読み込めば、証明書・秘密鍵・所在地をそのまま復元できます。証明書を取り直す必要はありません。
  • 保管場所 … バックアップファイルは USB メモリやクラウドなど、PC 本体とは別の場所にも保管しておくと安心です。
バックアップに含まれるファイル
.tbk(TQSL 形式)または.p12(PKCS#12 形式)に、秘密鍵+コールサイン証明書(+局の所在地)がまとめて保存されます。これ 1 つで別の PC に完全復元でき、証明書を取り直す必要はありません。
※ ARRL から届く.tq6は証明書のみで秘密鍵を含まないため、単体ではバックアップになりません。必ず.tbk.p12で保存してください。
おすすめのタイミング
「証明書を新規取得した直後」「更新した直後」は必ずバックアップを。加えて、年に一度など定期的に取り直すと安全です。

12. よくある質問(トラブル対処)

Q. 「不完全な証明書 ― TQ6 の一致が必要」と表示されます。 A. 秘密鍵はあるが.tq6がまだ読み込まれていない状態です。ARRL の処理待ちか、届いた.tq6の読み込み忘れが原因です。.tq6を受け取り、同じ PC で読み込めば解消します(第7章)。

Q. 証明書の有効期限が切れてしまいました。更新できますか? A. 切れた証明書は更新できません。新規(Replacement)として取り直してください。今後は必ず期限内(3年以内)に更新しましょう。

Q. パソコンを買い替えました。証明書はどうなりますか? A. 事前に.tbk / .p12のバックアップを取っていれば、新 PC に読み込むだけで復元できます。取っていない場合は、証明書の取り直し(新規リクエスト)が必要です。

Q. 更新したら、それまでの証明書は使えなくなりますか? A. 更新リクエストを出すと旧証明書は無効化されますが、新しい.tq6を読み込むと自動で置き換わり、そのまま使えます。処理は通常1営業日以内です。過去にアップロード済みの記録が消えることはありません。

Q. 交信したのに「Confirmed」になりません。 A. 相手局がまだアップロードしていないか、コールサイン・日時(UTC)・バンド・モードのいずれかが食い違っている可能性があります。特に日時の UTC 換算ミスが多い原因です。

Q. TQ6 はどこから入手しますか? A. 基本は ARRL からのメール添付です。受け取れない場合は、LoTW サイトにログインして[Your Certificates]からcerts.tq6をダウンロードできます。


最終更新:2026年8月。手続きの詳細・提出先・画面表示は変更される場合があります。最新情報は必ず ARRL の公式ヘルプページ(Logbook of the World Help)でご確認ください。

📝 執筆:JI2TAB(尾張旭 DMR デジピーター 管理人)
🏛 JJ2YYK あいちデジタルコミュニケーションハムクラブ

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